台東区が台風非難から野宿の仲間を排除した件について

台東区が、台風で避難しようとした野宿の仲間を排除した件について、あじいるが要望書を提出しました。今回の排除について野宿の仲間に謝ってほしい、災害時にはすべての人を保護してほしい、社会的弱者の声を聞いてほしい、野宿者の人権について台東区職員に研修してほしい、などが要望されています。

夜まわり三鷹も賛同しました。

 

人の命を、守るべき命と守らなくてもいい命に選別した台東区

 

憲法にはこんな条文があります。

日本国憲法第14条【法の下の平等

1すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

 

 公務員は法に基づいて仕事をしなればならない、こんな条文もあります。

日本国憲法第99条【憲法尊重擁護の義務】

天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。

 

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台東区への要望書
災害対策からホームレスの人々を排除した件について

台東区長 服部征夫 殿
                        2019年10月21日
                        一般社団法人あじいる
                        代表 今川篤子
                        (事務局)          
                        〒116-0014
                        東京都荒川区東日暮里1-36-10
                        電話:070-5542-9831

 

日頃、大変お世話になっております。このたび、上記の件につき、申し入れをさせていただきたく、お願い申し上げます。

台風19号が接近し、メディアではさかんに「命を守る行動を!」と呼び掛けている中、台東区災害対策本部は、ホームレスの人々(路上生活だけでなく、ネットカフェ生活など広い意味でホームレス状態にある人)を避難所には入れないという決定をしました。
ホームレスの人々を、災害対策の対象から除外するということは、行政として命を守らないということを宣言したことになります。災害対策基本法は、その目的(第1条)として「国民の生命、身体及び財産を災害から保護する」と掲げ、基本理念(第2条の2)として、「人の生命及び身体を最も優先して保護すること」と定めていますが、この目的・理念を逸脱しています。
家がないという状態が、災害に対して最も弱い存在になるということは、言うまでもありません。

台東区は拒否をした理由として「事実として、住所不定者の方が来るという観点がなく、援助の対象から漏れてしまいました」と報道関係者に説明しています。台東区は、山谷を抱える地域であり、ホームレスの人々が多く住んでいる地域であるにもかかわらず、住所がない人たちの存在を想定していなかったというのは、日常の業務の中でも、その人たちの命や人権を守るという意識が欠如していたからではないでしょうか。
私たちは、災害対策だけでなく、台東区が住所のない人たちへの日常的な対応を全庁的に検証し、改善することを求めます。

 

今回の台東区の決定は、ホームレスの人々に対する差別、排除に基づく決定であり、行政が人の命に優劣をつけ、切り捨てていくという絶対許されない行為です。私たちは、今回の台東区の決定に、強く抗議するとともに、以下の要望をします。

1.台東区は、避難所にホームレスの人々を入れないという今回の決定について、被害者に届くように、謝罪をしてください。10月15日付の台東区長の出した謝罪とコメントには「避難できなかった方がおられた事」とありますが、謝罪すべきはホームレスの人たちを拒否すると決定し、受け入れなかったことです。改めて謝罪することを求めます。

2.台東区は、命にかかわる緊急時においては、災害対策基本法の基本理念「人の生命及び身体を最も優先して保護すること」に遺漏がないようその責任を果たしてください。

3.これからの災害対策において、当事者並びに支援団体の声を聞いてください。
 災害大国日本と言われている中で、これまでにない事態に遭遇した時どう対処していくのか、これは今後の大きな課題です。特に都市部においては、多様な立場の人々がより多く存在していることを考えると、行政のみで対策を考えることには到底無理があります。ホームレス状態の人々のみではなく、社会的弱者と言われる人々の人権をしっかり守っていくためにも、当事者からの生の声を聞くことは不可欠です。

4.ホームレスの人たちに関わる生活保護行政、教育行政(ホームレスの人たちへの襲撃事件をなくすための授業の実施を含む)、人権行政などの日常業務が適切であったかどうかを全庁的に検証し、改善策を講じてください。また、ホームレスの人たちの人権に関する職員研修を定期的に実施し、幹部職員の参加を義務付けてください。

5.以上の点について、私達との話し合いの場を持つことを求めます。


 以上、2019年10月31日(木)までに文書での回答をお願いします。

 

 <10月12日の事実経過>
「一般社団法人あじいる」※1のメンバー5人が、12日の午後1時過ぎ、上野駅周辺(上野駅構内、文化会館周辺)のホームレスの人々に、非常食やタオル等を配ることと共に、台東区自主避難場所で上野駅から最も近い忍岡小学校に避難するよう勧めるチラシを配布しました。
 しかし、もうすぐ全員に配り終えるという時、1人の男性が、「午前9時ごろに行ってみたが、ことわられた。住民票が北海道にあるからといったら、ここは都民のための避難所ですと言われた」と言われました。
 小学校に出向いて区職員に確認し、その場で台東区の災害対策本部に電話をつないでもらい、真意を確かめました。すると、「台東区として、ホームレスの避難所利用は断るという決定がなされている」と明確な返答が返ってきました。
 私たちは、上野駅に戻りチラシの情報は誤りだったと告げて回ると、上野駅の入り口に座っていた一人が「今さっき行ってみたけれど駄目だと言われて帰ってきた」と話されました。
 その後、再度台東区災害対策本部に「今後避難準備や避難勧告が出た場合も避難所は利用できないのか」と問い合わせたところ、「ホームレス(住所不定者)については、避難所は利用できないことを対策本部で決定している」との返答でした。  

※1 一般社団法人あじいるとは
 2000年から活動している生活困窮者への食の支援をする「フードバンク」と、2001年からホームレスの人々の生活・医療相談活動を行ってきた「隅田川医療相談会」が統合して、2019年に発足した市民団体です。


【賛同団体・賛同個人】

 

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https://ashiato-project.jimdo.com/%E3%81%8A%E7%9F%A5%E3%82%89%E3%81%9B/