最低限度の生活の維持には,清潔を保つ必要がある。 公平な入浴政策を

 今年5月、三鷹市で、生活保護を申請した人がいます。申請が受理され、あらたな生活が始まったのですが…。
 アパートに風呂がない人に配布される入浴券(銭湯で使うもの)が配布されず、「今年の申請時期は終わったので、今申し込んでも来年6月からの配布になります。」と言われたそうです。
 まだ、今年度は始まったばかり。それなのに、来年度からしか配布されないって、一体どういうことなんでしょう? 調べてみると…


■入浴券配布は、東京都の生活文化局が担当

 生活保護受給者を対象に支給されている入浴券ですが、生活保護課が管轄している事業ではありません。東京都生活文化局消費生活部生活安全課公衆浴場係が携わっています。

 「平成22年度 生活保護世帯等に対する入浴料金助成事業実施要項(2010年3月30日 21生消生活第478号)」によると。
  ・入浴券の配布事業の目的
    生活保護法に基づく生活扶助及び中国残留邦人等の円滑な帰国の促進及び永
    住帰国後の自立の支援に関する法律に基づく生活支援給付を受けている風呂
    のない世帯に対し、公衆浴場の入浴券を配布することにより、生活保護世帯等
    の家計費の負担軽減と入浴機会の増大を図るとともに、公衆浴場の経営の安
    定に資することを目的とする
  ・配布の対象世帯
    ・多摩地域の市町村に住んでいる
    ・生活保護の生活扶助などを受給している
    ・自家風呂・共同風呂がない
  ・配布するもの
    一人当たり、3日に1回入浴することとして、その1/2を補助する(年間60枚)
  ・配布期間
    2010年4月1日〜2011年3月31日
  ・配布までの流れ
    東京都知事は、市の福祉事務所長を通じて、申請書を、対象世帯に配る。
    入浴券を配布してほしい世帯は、提出期限までに、福祉事務所長に、申請書を
     提出する。
    申請書を受け取った福祉事務所長は、知事に申請書を送る。
    申請書を受理した知事は、該当する世帯に配布する。


 公衆浴場係の担当者に問い合わせたところ、この費用は、東京都が100%負担しているそうです。都は、年度初めの4月1日現在の該当者名簿を、1年に1度、4月に各市から提出してもらうとのこと。申請書の提出期限は、4月中だそうです。


三鷹市以外の自治体では

 仲間と一緒に、いくつかの自治体や生活保護受給者に、入浴券について問い合わせてみました。
  ・立川市は、東京都が配布する1年間に60枚に加え、独自に年間24枚の入浴券
   を配布している。申請は、東京都と同じ、1年に1回・4月だけ。
  ・府中市は、東京都の配布に加え、独自に月5枚=年間60枚を配布。申請は、毎
   月。
  ・武蔵野市は、東京都の配布に加え、東京都の配布事業の名簿提出に間に合わ
   なかった人に毎月10枚を配布。
  ・三鷹市は、東京都の配布のみ。
  ・調布市は、東京都の配布のみ。
  ・八王子市は、東京都の配布のみ。

 三鷹市調布市のような自治体がある一方で、府中市武蔵野市のように柔軟に対応している自治体もあります。


■公平に実施してほしい!

 生活保護費は、水光熱費・食費などをまかなう生活扶助費、家賃をまかなう住宅扶助費、教育費をまかなう教育扶助費など、お金の使い道によって8種類に分かれています。8種類のお財布があるようなものです。教育扶助費のお財布は、通学していなければ必要ありません。必要なお財布の必要額が毎月算定され、支給されます。
 入浴代は、生活扶助費の財布から支出します。三鷹には安いコインシャワーがないので、銭湯に行くしかありません。銭湯代は、450円。夏でも3日に1回しか入らなかったとしても、1ヵ月5000円かかります。支給される8万円の中から毎月5000円を出費するのは、かなりの負担です。
 一方、内風呂があるアパートに住んだ場合、家賃は住居費として支給されるので、生活扶助から風呂代にかかる費用は水光熱費だけです。3日に1回風呂に入っても、水光熱費だけなら1000円くらい?
 このような差があるからこそ、入浴券が配布されているのだと思います。なのに、今年5月に申請書を出したら今年度の受け付けは終わったので来年度からしか支給されないって…、まだ今年度は始まったばかり。行政は年度単位で考えているのかもしれませんが、生活者は毎日を生きており、来年度まで入浴しないわけにはいきません。入浴券が今年6月から支給されるか来年6月から支給されるかは、当人にとっては大きな経済問題です。
 この実施要項に従えば、4月1日に生活保護を申請した人はその年の7月から風呂券を受け取ることができ、4月2日に申請した人は来年の7月からしか風呂券を受け取れません。1年に1回だけしか該当者名簿を更新しないって、商売であれば考えられない優雅さです。
 税金による支出で風呂券がまかなわれている以上は公平に運用されるべきです。4月1日と4月2日に申請した人では風呂券支給が1年も遅くなること、内風呂がある人は安くすむこと、などが公平性に欠けます。
 生活保護が最低生活の保障であることにかんがみ、最低生活を誰もが維持できるよう、公平に入浴券を配布してほしいと思います。


■このことを何とかしたいと思う当事者・支援者の方は、ご連絡ください
  →070−5451-7010
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