野宿者−持たざる者の全都メーデー宣言

                  
 
 5月3日、野宿者−持たざる者の全都メーデーを行いました。
 山谷・堅川・渋谷・三鷹・府中・立川から集まった仲間からアピール。また、被ばく労働を考えるネットワーク(準)、堅川弾圧救援会、差別排外主義に反対する連絡会、ASIAN PEOPLE’S FRIENDSHIP SOCIETY(APFS)、自由と生存のメーデー実行委員会、タイからの客人から連帯のアピールがありました。
 土砂降りの雨の中、御徒町公園から上野まで歩き、「持たざる者は闘うぞ」「生存権・居住権をかちとるぞ」「労働の権利をかちとるぞ」「全国、全世界の仲間と連帯して闘うぞ」「我らの春をかちとるまで闘うぞ」と訴えました!



                 メーデー宣言


 今メーデーは、区部東部圏である御徒町公園で集会を開催し、上野公園までのデモを闘う。この1年、東部圏においては竪川河川敷公園や荒川堀切橋で強制排除・撤去攻撃が激しさを増し、それと闘う全都各地の野宿者−持たざる者や労働者−民衆の団結を打ち固めるために、私たちは本日、ここに結集した。そもそもメーデーとは約130年前、労働者の権利をかちとるためのアメリカ・シカゴでのゼネストに対する血の弾圧を起源とした労働者−民衆の闘いの日であり、ここ上野は1920年、日本ではじめてメーデーが闘われたところだ。

 失業・野宿状況は、流動的下層労働者として政府・資本により政策的にとして生み出したものであり、就労、福祉、医療、居住など社会的排除によってその増大化、長期化が進行した。野宿の仲間は、睡眠・休息と食という最低限の生存の条件を文字通りかちとらなければならないところまで追いつめられてきた。しかしその生きるための寝場所すら奪われ続け、現在も奪われようとしている。

 この数年来、都内各地においては、民(資本)−官(行政)一体による都市再開発をテコとした排除・撤去が激化している。今越冬突入直後、竪川河川敷公園の仲間に対し、江東区は行政代執行の手続きに着手し、2月8日、だまし討ち的、暴力的に1名の仲間のテントに行政代執行を強行、同9日には江東区に抗議した支援者1名を不当逮捕、後起訴した。4月24日には公園内に移転した仲間のテントに対し、5月1日を期限とする撤去の指示書が張られ、5月3日の「竪川改造計画」の目玉「カヌーカヤック場」オープンを目前にして予断の許さない状況にある。荒川堀切橋の仲間に対しても国土交通省の強制排除・撤去が繰り返され、現在も攻防が続いている。そのような中、同22日、「スカイツリー」がいよいよ開業する。

 区部西部圏においては、一昨年9月、渋谷区が宮下公園で「ナイキ化計画」のために行政代執行を強行し、昨年4月30日、2名の支援者の不当逮捕を出しながら、「みやしたこうえん」としてリニューアルオープン、現在もなお夜間閉鎖が続いている。昨年11月1日には長年野宿の仲間の寝場所であり、共同炊事の拠点だった児童会館が東京都により完全閉鎖された。この1、2年の内に駅周辺や美竹公園周辺の巨大再開発が本格的に始動する。

 また野宿の仲間が収入源としてきたアルミ缶や古紙などの資源物回収の規制強化がこの間、各自治体によって推進されている。「持ち去り」の禁止に加え、罰金を課する条例制定は、江東区墨田区立川市と続き、2011年6月の東京都「古紙持ち去り問題対策検討協議会」設立がそれを後押ししている。現在三鷹市でも条例「改正」が目論まれており、野宿の仲間の生活の糧を奪い、排除・差別をあおる資源物回収規制は全都に波及する勢いである。これらの野宿者の生存そのものを奪い取る攻撃に対して、全都各地の野宿の仲間、支援の仲間、すべての持たざる者の陣形で迎え撃たなければならない。

 野宿者に対する排除は行政による追い出しだけではなく、政府の新自由主義政策の一環である自立支援対策の浸透によって実現されてきた。その根拠である2002年に制定された「ホームレス特別措置法」は、今年期限切れだが、政府はそれ「延長」するという。しかし、「特措法」は、「故なく公園等を起居する者」という「ホームレスの定義」をもって、自らの責任を野宿者個人に転嫁、「自立支援」の名の下に「自助努力」を強制し、「ホームレス」状態にある仲間に分断を持ち込んだ。福祉事務所の窓口において、「自立支援センター」に入るか、ピンはね、劣悪環境の横行する「貧困ビジネス」の生活保護施設に入るか選択を迫られ、たとえ入所したとしても再度路上に舞い戻る野宿者は圧倒的に多い。

 さらには自治体の財政負担を理由に、「就労支援の強化」による期限適用や、年金、最低賃金を基準とした生活扶助額の削減、「不正受給」の取り締まり徹底などを盛り込んだ生活保護法の改悪が進められている。生活保護行政はすでに「自立支援システム」を導入しており、法改悪により「最低限度の生活保障」はますます切り縮められるだろう。厚生労働省の福祉窓口への警察OB導入方針は、法改悪−生活保護抑制に対する抗議の声を封じるためのものであることは明らかである。「自立支援対策」、「貧困ビジネス」に依存した生活保護行政、そして法改悪は、「ホームレス」状態にある仲間をさらに不安定化させる政策として連動しており、「ホームレス階層」として対決していかなければならない。

 昨年のメーデーは、3・11東日本大震災原発事故の傷跡の生々しい中で行われた。あれから1年、現在もなお被災者に生活破壊、失業、自殺などの犠牲を強い続けており、それは野宿者−持たざる者だけではなく、すべての労働者−民衆に拡大している。また原発労働は命と引き換えにした被曝労働を前提としたものであることがあらためて浮き彫りになった。電力資本やゼネコン資本を頂点とした重層的労務供給構造は原発労働者や復旧作業労働者を搾取し続けており、それらに動員されてきたのは歴史的にみても野宿者−持たざる者である。私たちは、この間被災者といかにつながるか模索してきたが、今後さらなにつながりを深めていくとともに、原発労働者やすべての被災地労働者と結びついていきたい。

 私たちは、被災者に対する「なまけもの」、「昼間から酒を飲んでいる」などの排除・差別、そして分断を、3・11以降の震災・原発事故状況がもたらしたものであり、野宿者−持たざる者に対するそれと連なるものであると考える。「がんばれ日本」の掛け声の下、もたげ出したナショナリズムは、この間、在日朝鮮人、中国人、外国人に対する暴力的な言動を撒き散らしてきた在特会などの差別・排外主義勢力の台頭を押し進めることに手を貸している。私たちは、あらゆる排除、差別、分断を許さない。

 私たちをめぐる状況はますます厳しくなっている。この冬の時代を変えていくために、野宿者、失業者、日雇い、飯場労働者、派遣やフリーターなどの不安定雇用労働者、生活保護受給者など「ホームレス」状態にあるすべての仲間の階層的団結がこれまで以上に求められている。具体的には当事者に依拠し、それを出発点としながら、仲間の水平な関係による私たちの側の共同性の実現である。野宿・失業状況に対しては、資本という名の「民活」ではなく、政府・行政にきっちりおとしまえをとらせるとともに、排除・差別・分断に対しては持たざる者の広範な陣形で闘っていこう!「ホームレス」状態を強いられている被災者や被曝労働を強いられている原発労働者とともに何を目指していくのか、議論と実践を通じながら、分断や限界点を乗り越え、結びつきを強めていこう!持たざる者からすべての労働者・民衆との連帯・共闘を今以上に前進させていこう!

 本日、メーデーを号砲にして、我ら労働者−民衆の春をかちとろう!

 排除には我らの団結を! 分断には我らの連帯を! 我らの共同による闘いの勝利を!


2012年5月3日

野宿者−持たざる者の全都メーデー参加者一同