【抗議文】竪川河川敷公園における仲間に対する排除を弾劾する

                                           2012年4月12日


    竪川河川敷公園における仲間に対する排除を弾劾する

   
                     東京市部区部「ホームレス」支援活動懇談会(仮)
                       日雇全協・山谷争議団
                       NPO法人さんきゅうハウス
                       三多摩自由労組
                       三多摩野宿者人権ネットワーク
                       渋谷・野宿者の生存と生活をかちとる自由連合
                       府中緊急派遣村
                       夜まわり三鷹



 私たちは、東京都市部及び区部で野宿者を支援している団体の集まりである。


 私たちは、竪川河川敷公園から野宿の仲間を執拗に追い出そうとしている江東区に対し、強く抗議する。江東区長区長山粼孝明に対し、野宿の仲間が仕事・住居を喪失している状態について、排除ではなく話し合いによって解決するよう求める。
 また、野宿当事者と共に江東区に対して話し合いを求めている最中の2月9日、支援の仲間を器物損壊罪で逮捕した警察、威力業務妨害罪で2月29日に起訴した検察に抗議する。検察に対し、起訴を取り下げて支援の仲間を直ちに釈放するよう求める。


江東区の業務の実態
 堅川河川敷公園では、仕事と住居を失っても福祉で救済されなかった野宿者が、テントを立てて都市雑業などをしつつ仲間同士で助け合って暮らしていた。2006年、江東区は公園改修工事の名目で立ち退きを一方的に迫ってきた。野宿の仲間は、 工事地区からテントを移動して、工事に協力してきた。
 にもかかわらず、2011年末、江東区は行政代執行=強制立ち退きの手続きを始めた。生活を破壊されることを恐れた野宿の仲間は、2012年1月、工事が終了した地区に移住した。その日以降、工事の妨害になっていないのに、江東区は野宿者に対する嫌がらせを始めた。工事が終わっているのに、公園を封鎖してしまった。
 野宿の仲間と支援者は、話し合いを粘り強く求め、江東区は2月9日の話し合いを約束した。
 しかし、2月8日早朝、江東区は、抜き打ち的に、体調不良のために工事終了地区に移動できなかった野宿の仲間一人に対し、体調不良の事情を知っていながら行政代執行を強行した。移動を強制された仲間は倒れ、抗議する野宿・支援の仲間に、江東区職員・警察官・ガードマンが暴行を繰り返した。
 翌2月9日、江東区は約束していた話し合いを突然、反故にした。野宿と支援の仲間が話し合いを求めて区役所に行ったが、江東区は面会を拒否し退去を警告してきた。こうした中、支援者の一人が区役所内のガラスを割ったとして器物損壊罪で逮捕された。そして、2月29日に威力業務妨害罪で起訴され、東京拘置所に移管された。
 江東区は、現在も、公園を封鎖している。区報「こうとう」2月11日1面で、「野宿者は、江東区が支援しているにもかかわらず不法占拠を続け、支援者も集まって工事を妨害しているため封鎖している。今後も警察と協力し、園内からの退去を求めていく」と掲載した。工事終了済みの地区に移っており、工事は何も妨害していないのに。


野宿の仲間の排除
 江東区は、公園立ち退きと引き換えに、手前勝手な施策を野宿の仲間に押し付けている。
 野宿者は、仕事と住居を失い、福祉事務所でも救済されず、路上での生活に至っている。日本で最も貧困な人々である。住民票喪失によって社会的資源を一切利用できない野宿者にとって、仲間との助け合いだけが生き延びるための資源だ。その仲間との安心・安定した暮らしを突然手放して分断された江東区指定の住居に住むよう、江東区は強要するべきではない。
 しかも、この間、江東区が提示する住居とは本人の居住権が認められない借り上げアパートへの入居であり、期限が過ぎれば追い出す旨が書いてある。これでは安心して住むことはできない上に、生活保障があるわけでもなく、生活保護以下の保障と言わざるを得ない。江東区は、野宿の仲間の意思を尊重すべきであり、そのために話し合いをすべきである。
 公園封鎖によって、野宿の仲間にとって唯一ともいうべき収入源となっているアルミ缶回収などができなくなっている。江東区は、兵糧攻めによって野宿者を殺そうとしている。ただちに封鎖を解くよう求める。


威力業務妨害罪での起訴
 私たちは、支援の仲間が威力業務妨害罪で起訴されたことに、強い危機感を持っている。行政の不当な対応・処分に抗議し、対応を変えさようとすることを否定する起訴だからだ。
 威力業務妨害とは、「威力を用いて人の業務を妨害した者」と規定され、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処せられる。
 水際作戦と言われるように、当事者が生活保護を申請しても、受理さえされない実態がある。こうした中、支援者が交渉することもあるが、声を荒げただけで「威力妨害罪」になりかねない。業務とは何かを行政が決め、業務が妨げられている状態も行政が決め、それによって人権が侵害されても抗議すれば威力業務妨害罪となる可能性があるのであれば、人々が自ら権利を求める行為を萎縮させることになりかねない。直ちに仲間の起訴を取り下げ、身柄の自由を保障するよう求める。


 私たちは、最も貧困な人々が最後にたどり着いた唯一の寝場所から暴力によって執拗に追い出すことも、話し合いを拒否することも、公務員の正当な業務ではないと断言する。江東区は、話し合いを求めて江東区に行った野宿の仲間や支援者が、区役所の玄関に入ることすら阻止している。江東区が、区役所建物内に入れる人と入れない人を選別し、行政サービスを求めにいくことすら拒絶していることに抗議する。
 2月9日の抗議行動は、話し合いを拒否し公園から排除することしかしない江東区長に所以する。私たちは、江東区に対し、これまでの野宿の仲間への暴行を含む対応を当事者に謝罪し、今後について話し合いをするよう求める。また、公園の封鎖を直ちにやめるよう求める。