江東区は、野宿の仲間の排除をやめろ!

江東区に対し、竪川河川敷公園での強制排除を止めるメール・FAXの集中を!
6年以上にわたり、公園改修工事計画について、野宿する人々と区との間で話し合いが行われてきた江東区竪川河川敷公園で、野宿の小屋を強制的に排除する手続きがはじまっています。「追い出しは行わない」と繰り返し言ってきた江東区水辺と緑の課ですが、昨年秋から話し合いの道を放棄し暴力的な追い出し路線へシフト。年末の12月22日には「弁明機会付与通知」という書類を、野宿する16件の仲間の小屋に配りました。年明けの1月5日に私たちは弁明書を提出し、現在、この弁明書を考慮しつつ、江東区が「除却命令」を出すかどうか、区内で検討が行われている段階です。1月5日、江東区職員は、このまま除却命令
→戒告書→代執行令書通知→行政代執行、と強制排除へ向かって手続きが進む可能性を示唆しました。
いま、"除却命令"が発行されるかどうかが大きな焦点になっています。もしこの命令が出されると、水辺と緑の課を越えて、江東区が区として正式に話し合い路線を放棄し、暴力的な野宿者追い出しを行いつつ公園工事を行うことの宣言となります。江東区、そして竪川河川敷公園の野宿の仲間は大きな岐路に立っています。除却命令が出されるかどうかで、もっとも貧しい人々のこれからの生活が大きく左右されることになります。心を寄せてくださる皆さんに訴えます。江東区に対し、除却命令を出さないよう皆さんの声を集中してください。
以下、江東区水辺と緑の課(野宿者追い出し担当課)と区長のFaxとメールです。どうぞよろしくお願いいたします。
江東区水辺と緑の課 電話:03-3647-2089、FAX:03-3647-9287、メール(江東区のホームページから)
江東区長 FAX:03-3647-4133、メール(江東区のホームページから送信)

■野宿者強制排除と襲撃を許さない江東デモ
1月22日(日) 11:00  亀戸の文泉公園(江東区亀戸2丁目4-13)


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夜まわり三鷹より、江東区長あてに1月18日に出したメール
●表題   竪川河川敷公園に住む野宿者に対する排除をやめてください
●回答  必要
●内容
野宿者は、労働政策や社会保障制度によって救済されることなく住居=私的空間を失った人々です。私的空間が奪われた状態にあるということは、日本においては最も貧困な人々といえます。最も貧困な状態にある人たちからさらに眠ったり食べたりする場所を奪うとは、さらなる貧困=死に追い込むことにほかなりません。人が生きるには、眠ったり食べたりする場所が地球上のどこかに必要です。野宿者は、私的空間を失ったために、そうした場所を公的空間に求めざるを得ません。私的空間を奪われ、さらに公的空間からも追い出されれば、肉体を存在させることもできなくなります。
 堅川河川敷の人々は、私的空間である住居を失ったために社会制度を利用できない貧困状態にありながらも、金銭を得たり食べたり眠ったりという生存のため の行為を、社会制度ではなく仲間で助け合うことで暮らしています。私的空間を失っても助け合うことで生きる基盤を作ってきたといえます。
 日比谷緊急派遣村は、リーマン・ショック後の派遣切りで路上で暮らさざるを得ない人たちの存在を浮き彫りにしました。また、東北大震災では、津波原発 事故で家を失った人々が、学校の体育館などの公共施設で暮らすことで命をつないできました。関東地方で帰宅難民となった人々が、公共施設で一夜を明かしま した。公的空間は、人々が存在の危機におちいったときに広く門戸を開き、生存のために必要なものを提供する義務があります。人々の共通の財産であるからで す。
 国連の社会権規約には、日本よりももっと貧しい地域で暮らす人々が、寝起きしているスラムやゴミ置き場から追い出されることがないよう、社会権規約で強制立ち退きを禁じています。
 野宿者は、常に、存在の危機状態におかれています。生存するための最後の公共空間からの追い出しはやめ、話し合いを続けることで解決するよう求めます。


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                              2012年1月16日
江東区長 山さき孝明様

                  寄せ場野宿者運動全国懇談会

        竪川河川敷公園における野宿者排除に対する抗議と中止要求

 私たちは全国で住居を喪失し野宿生活を余儀なくされている当事者と支援者の団体です。 
 現在貴職が本年1月12日付け除却命令書等により、竪川河川敷公園内でテント小屋掛け等を住居として起居する人々に対して立ち退きを要求し、彼らの住居であるテント等の物件の撤去を求めていることは、野宿者の生命権、生存権や居住する自由など憲法上人権を侵害し、彼らを生存の危機にさらし、人間としての尊厳を傷つける違法かつ不当な行為であって、即刻中止することを求めます。

【抗議及び要求の理由】

第1 本件除却命令には目的としての正当性がない
 都市公園等公共施設にテント等を建てそれを住居とする野宿生活を余儀なくされている人々がいるのは、職を失い、収入を断たれ、住居をも失った人々に対して、国や地方公共団体が安心して居住できる適切な住居や安定した雇用の場を確保するなど健康で文化的な最低限度の生活を保障する責務を履行していないからである。国や地方公共団体が自己の責務を履行していないからこそ、野宿者は公園等に住居を建て、自身の力で自らの生活を支えざるを得ないのである。にもかかわらず、野宿者が自力で確保した住居を撤去し、退去することを一方的に求めることは、この地上に住む権利、居住する自由を奪うことに他ならない。区が、追い立ての受け皿として、借り上げアパート等の住居を用意しているとしても、それは時限を切ったもので、地域に安心して居住し生活を支える基盤となし得るものでなく、およそ健康で文化的な最低限度の生活を保障する責務を果たしているものとはいいがたい。
 今回の除却命令等は「日本庭園風広場にする修景工事」の一環のようであるが、区の職員が当事者等に対して「野宿者が公園内で酒を飲んだり、排泄行為をするという区民からの苦情がある。また、暴力をふるったという匿名の情報がある。区民が不安に思いテントを撤去してほしいという要望がある。これに対しては、テントをゼロにしますと答えている。」と明言していることから、野宿者に対する差別偏見に基づく排除こそ真の目的であるものと思われる。とすれば、本件除却命令は日本国憲法及びホームレスの自立の支援等に関する特別措置法等に違反するものであって、そもそも工事それ自体に目的としての正当性はない。

第2 住民の苦情によって野宿者排除を正当化することは許されない。住民の偏見差別を助長する行為こそが野宿者襲撃を誘発している。区の責任は重い。
 竪川公園の近隣住民から苦情が寄せられているという事実自体が真実であるか否かはさておくとしても、野宿者に対する差別偏見に基づく住民の苦情に対しては、区は住民の野宿者に対する差別偏見を無くすべく、人権の啓発によって対応すべきである。 ホームレス自立支援特措法3条1項3号は、「国民への啓発活動等によるホームレスの人権の擁護」を目的として掲げ、その履行を地方公共団体の責務としている(同法3条2項及び6条)。また、人権教育及び人権啓発の推進に関する法律3条は、「国及び地方公共団体が行う人権教育及び人権啓発は、学校、地域、家庭、職域その他の様々な場を通じて、国民が、その発達段階に応じ、人権尊重の理念に対する理解を深め、これを体得することができるよう、多様な機会の提供、効果的な手法の採用、国民の自主性の尊重及び実施機関の中立性の確保を旨として行われなければならない」ことを基本理念として掲げ、5条はこれにのっとり、地方公共団体が「国との連携を図りつつ、その地域の実情を踏まえ、人権教育及び人権啓発に関する施策を策定し、及び実施する責務を有する」ことを定めている。
 法務省は人権擁護における主な人権課題の一つとして「ホームレス」の人々の人権を位置づけ、「自立の意思がありながら,やむを得ない事情でホームレスとなり,健康で文化的な生活ができない人々が多数存在し,嫌がらせや暴行を受けるなど,ホームレスに対する人権侵害の問題が起こって」いることを重大な問題として受け止め、「ホームレスに対する偏見や差別の解消を目指して,啓発活動や相談,調査救済活動に取り組」むことを定めている。 
 また、東京都人権施策推進指針は「路上生活者(ホームレス)は、その自立を妨げるさまざまな要因があり、住居の確保はもちろん、就職が困難であるほか暴行を受けるなどの問題を抱えています」として、「このため、自立支援やホームレスとなることを防止するための生活上の支援などが行われており、平成14(2002)年にはホームレス自立支援法が制定されました。偏見や差別をなくし、自立を支援していくことが必要」だとしている。
 地域住民の苦情に同調し、野宿者排除に走ることは、地域住民の人権への配慮として正当化されうるものではない。ホームレス特措法7条は国民に対して「ホームレスに関する問題について理解を深めるとともに、地域社会において、国及び地方公共団体が実施する施策に協力すること等により、ホームレスの自立の支援等に努める」責務を課しているのであって、野宿者に対する差別を行ってはならないだけでなく、野宿者が公園等に起居して公園の利用について多少の支障を来すことがあったとしても、受忍すべき義務があるのである。それは震災罹災者が体育館で起居したり、公園に仮設住宅を建てて起居したりすることによってこれらの施設の利用が制約されることが
あっても受忍すべきであることと同じである。
 ホームレス特措法、人権啓発推進法等によって区は、野宿者に対する差別偏見を無くすべく、人権の擁護・人権開発活動に努めるべき重大な責務があるのである。にもかかわらず、区の人権啓発担当者を含む職員たち自身が、野宿者に対する差別的発言を行い、住民の野宿者に対する差別偏見を煽るような行為を繰り返していることは自己の職責に反するものであって、許し難い重大な人権侵害行為である。住民の野宿者に対する偏見差別をなくすための啓発活動をなすべき区がこのように偏見差別を助長するような言辞を弄しているからこそ、子どもたちによる野宿者襲撃事件が発生するのであって、襲撃についても区は大きな責任があるというべきである。
 区が行うべきなのは、まず、ホームレスの人々の人権に関する啓発であり、ホームレスの人々への安定した雇用の場の確保、安定した居住場所の確保などの責務である。区が責務を果たし得ないため、ホームレスの人々が公共施設等をやむなく居住の場所としている場合に、住民が苦情を申し立ててくる場合には、くりかえし人権啓発を行い、理解と協力を求めるべきである。
  
第3 本件除却命令による野宿者排除は違法であり、重大な人権侵害である。
 ホームレス特措法11条は、たとえホームレスの人々が「故なく」、即ち都市公園法等の法令に違反して、公園等を起居の場としている場合であっても、直ちに都市公園法等公物管理法の手続によって物件撤去などを行うことを禁止している。
 特措法11条はまず、公園等に「故なく起居している」ことのみをもって退去強制や物件撤去を行うことを禁じている。「故なく起居」していることを前提として、それであっても以下のような厳格な手続を経るべきことを最低限要求している。
 第一に、公園等の適正な利用が妨げられているという実害があること。
 第二に、ホームレスの自立の支援等に関する施策との連携を図ること。
 第三に、法令の規定に基づくこと。
 第四に、執るべき措置が、「当該施設の適正な利用を確保するために必要」なものであること。
 以下、本件除却命令が、極めて不当なものであって、特措法の定めに反し、憲法上保護された権利を侵害する重大な違法行為であることを指摘する。
 まず、前提として、そもそも竪川公園内における起居が、「故なき」ものであるのか。
 竪川公園の当該地区に起居する人々は、区側との話し合いを経て、現在の場所に起居しているのであるから、そもそも「故なく起居」しているものではなく、公園管理者が現在の場所に物件を建て起居することを容認してきた事実があることが重要である。
 にもかかわらず、都市公園法違反を一方的に主張すること自体、区と当事者との間の話し合いの成果を一切無視するものであって、信義則に反するものである。
 次に特措法11条の要件について検討する。第一に、公園等の適正な利用が妨げられているという実害があること。この実害は、重大な害でなければならない。公園に起居しているホームレスの人々に退去を要求することは彼らが居住場所を失うという重大な損害を被るものであって、「野宿者が公園内で酒を飲んだり、排泄行為をするという区民からの苦情」や抽象的な不安の存在のような程度のものでは、重大な実害とはいえず、このような苦情に基づき退去強要することは比例原則に違反する。  
 第二に、ホームレスの自立の支援等に関する施策との連携を図ること。
 江東区は、本件物件撤去・退去強制の手続と並行して、「竪川河川敷公園路上生活者対策事業」または「竪川河川敷公園地域生活移行支援事業」なるものを実施しているが、同事業の内容をみれば、特措法11条が要求している「自立の支援策」とはいいがたいものである。そもそも、特措法が要求している自立の支援策とは、安定した雇用の場の確保や安定した居住場所の確保など、安心して居住できる住居を確保し、安定した地域生活を営みうるような施策である。しかし、江東区による同事業の利用申込書・誓約書、同意書等をみれば、明らかに特措法の要求する支援策と食い違っていることが明らかである。
 まず「誓約書」3項に「利用期間が終了したとき」には無条件に「必ず借り上げアパートから退去いたします」と定められている。その時点において、新たな居住場所が確保されているか否かに関わらず、退去を強制することは、第一に居住権の侵害であり、第二に、特措法が定める安定した居住場所の確保責務に反するものである。アパートからの無条件な退去を義務づけ、住居喪失に追い込むことは、特措法の責務上も許されない。
 同誓約書6項には、「荷物を置いて出たときは、その荷物が紛失しても、処分されても請求は一切致しません」と定められている。これは明らかに憲法29条1項「財産権は、これを侵してはならない」に違反するものであり、また民法上保護された所有権を不当に制限剥奪するものであって、本事業の借り上げアパート利用契約は公序良俗に反し無効である。
 第三に、法令の規定に基づくこと。法令には、都市公園法など公物管理法や行政代執行法などのみならず、日本国憲法国際人権規約自由権規約社会権規約)などの国際約束も含まれる。ホームレスの自立の支援等に関する特別措置法の運用に関する件(衆議院厚生労働委員会決議2002年7月17日)第五項は、「第十一条規定の通り、法令の規定に基づき、公共の用に供する施設の管理者が当該施設の適正な利用を確保するために必要な措置をとる場合においては、人権に関する国際約束の趣旨に充分に配慮すること」を命じている。
 社会権規約11条は、「この規約の締約国は、自己及びその家族のための相当な食糧、衣類及び住居を内容とする相当な生活水準についての並びに生活条件の不断の改善についてのすべての者の権利」を定めており、これは、「適切な居住に対する権利」を保障したものであって、強制的な立ち退きを原則禁止したものと解されている。強制的な立ち退きに関しては、日本政府も参加して53ヵ国代表の満場一致で採択された国連人権委員会の「強制立ち退きに関する決議」(1993年)が、「1.強制立ち退き行為は、人権、特に適切な住宅への権利に対する重大な違反であることを明言する。2.強制立ち退き行為を無くするために、あらゆるレベルで直ちに対策をとることを各国政府に要請する」と定めている。
 また、社会権規約委員会の一般的意見第7号は、強制退去は居住への権利のみならず他の人権をも侵害しがちなものであることを確認した上で(5パラ)、「退去は、個人をホームレスにし又は、他の人権侵害を受けやすい状態を結果としてもたらすべきはない。影響を受ける人が自分自身で供給することができない場合には、締約国は、場合に応じて、十分な代替的住居、生産的な土地への再定住又はアクセスを確保するため、利用可能な資源の最大限まで、あらゆる適当な措置を取らなければならない」(17パラ)としている。
 そして、「適当な手続的保護及びデュー・プロセスはすべての人権の不可欠な側面であり、両方の国際人権規約で認められた権利の多数に直接にかかわる強制退去のような事柄に関しては特に適切である。委員会は、強制退去に関連して適用される手続的保護は以下のものを含むと考える。(a)影響を受ける人との、真正な協議の機会、(b)退去予定日の以前の、影響を受けるすべての人に対する十分かつ合理的な通知、(c)提案されている退去に関する情報及び、あてはまる場合には、土地又は住居が使用される代替的目的に関する情報が、影響を受けるすべての人に対して合理的な期間内に利用に供されること、(d)人々のグループがかかわっている時には特に、政府官僚又はその代表が退去の間立会うこと、(e)退去を行うすべての人の身分が正しく明らかにされること、(f)影響を受ける人がその限りでないと同意する場合を除き、退去は、特別な悪天候のもとで又は夜間に行われないこと、(g)法的救済を与えること、並びに、(h)可能な場合には、裁判所から救済を求めるために必要としている人に対して法的扶助が与えられること。」を定めている。
 これらの手続のうち、主要な二点、つまり住居の確保、「真正な協議」の実施についてみても、江東区はこれらを遵守しているとはいえない。適切な住居の確保責務については、上述した通り果たしているとは言えない。
 「真正な協議」については、当事者とじっくり話し合っていきたいと言っておきながら、昨年9月頃からは当事者たちからの協議要求に対してまったく答えず、一方的な退去要求を繰り返してきた。それまで、竪川河川敷公園に起居する野宿者たちは区側との話し合いに対して真摯に臨み、区側の要望に対しても譲歩しつつ、現在の居住場所に移住したのであるが、区の強硬な姿勢はこうした話し合いの成果を反故にするものである。
 第四に、執るべき措置が、「当該施設の適正な利用を確保するために必要」なものであること。現状復帰ではなく、当該場所をフェンスで覆い誰であれ立ち入れなくするような施設の設置は当然ながら許されない。また、新規に施設を建設するためという理由も、「必要な措置」とはいえない。本件工事は、「日本庭園風広場にする修景工事」ということであり、現在、公園の利用において重大な実害が発生しており、それを除去するという目的を掲げているものでもなければ、実害の除去のために必要な措置をとるものでもない。現在の公園利用において何等かの実害があるのであれば、まずそれを明確にすべきである。また、その実害除去の為に、退去強制以外のより制限的でない方法があるのであれば、それを採用すべきである。当事者と話し合えば、退去強制以外をせずとも、そのような方法が見つかるはずである。
  
結論
 本件除却命令による野宿者の住居撤去強制は目的において野宿者に対する偏見差別に基づく排除であることは明白であり、手段においても憲法、ホームレス特措法等の法令に反するものであって、野宿者の人権を侵害し、尊厳を傷つける重大な違法行為であって、即刻中止すべきである。また、竪川河川敷公園に起居する野宿者に対して謝罪し、「真正な協議」を行うべきことを要求する。