資料1

監督 佐藤零郎

「2007 年2月5日長居公園テント村は、テントが潰されるなか芝居をした。」この映画で伝えたいことは、この一文に凝縮されている。その日、長居テント村はお昼に なる頃には、はじめから何もなかったかのように、跡形もなくなくなっていた。しかし、なにかは、確実に浸透している。
1年前、同じ大阪市内のうつぼ・大阪城公園で強制代執行の現場でテントが潰されるのを撮影した。
テントを潰される中で私は何も感じずにいた。私は今潰されているテントが、誰のテントかも知らずに黙々と撮影をした。自分のテントが潰されているわけでもないのに、怒り叫ぶ人達を怪訝な目で見ながら。
 その半年後、長居公園テント村が立ち退きを要請されているのを知った。いづれは強制代執行がくることは誰もが知っていた。
私は1年前のような、自分自身が何も感じていない映像は撮りたくないと思った。単身長居テント村で生活しカメラを廻しだした。
公 園でのテント生活の厳しさ、また路上生活はさらに厳しいこと、野宿生活者に対する侮蔑的な眼差し、長居テント村はコミュニティーみたいなものが形成され個 々のつながりがあった。そこには自分と同年代の若者も集まっていた。なんとか生きながらえている人達がいた。テントがいつ潰されるかもわからない不安な状 況下で、私は長居テント村での関係も深まり、テント暮らしを半ば楽しみつつあった。
しかし、私はテントが潰される瞬間を待ち望んで撮りにきたのだった。自分のテントが潰されるのを怒り、泣き、叫ぶ人達をカメラで撮りに。
そして、彼らは私以上に知っていた、私が何をしにこの公園にきたのかを。